最後の「e」は「´」付き]《ヴァニテエ》が動き出して来るのである。しかし恋愛はしない。恋愛というものをいつかはしようと、負債のように思っていながら、恋愛はしない。思慮の冷かなのも、そのせいだろうかなどと考えて見る。
広小路で電車を下りたときは、少し風が立って、まだ明りをかっかっと点《とも》している店々の前に、新年の設けに立て並べてある竹の葉が戦《そよ》いでいた。純一は外套の襟を起して、頸を竦《すく》めて、薩摩下駄をかんかんと踏み鳴らして歩き出した。
谷中の家の東向きの小部屋にある、火鉢が恋しくなった処を、車夫に勧められて、とうとう車に乗った。車の上では稍々《やや》強く顔に当る風も、まだ酔《えい》が残っているので、却《かえっ》て快い。
東照宮の大鳥居の側《そば》を横ぎる、いつもの道を、動物園の方へ抜けるとき、薄暗い杉木立の下で、ふと自分は今何をしているかと思った。それからこのまま何事をも成さずに、あの聖堂の狸《たぬき》の話をしたお爺いさんのようになってしまいはすまいかと思ったが、馬鹿らしくなって、直ぐに自分で打消した。
天王寺の前から曲れば、この三崎北町《さんさききたまち》あた
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