》から来た車は、少し透いていたので、純一は吊革《つりがわ》に掴まることが出来た。人道を歩いている人の腰から下を見ている純一が頭の中には、おちゃらが頸筋《くびすじ》を長く延べて据わった姿や、腰から下の長襦袢を見せて立った形がちらちら浮んだり消えたりして、とうとう便所の前での出来事が思い出されたとき、想像がそこに踏み止《とど》まって動かない。この時の言語と動作とは、一々|精《くわ》しく心の中《うち》に繰り返されて、その間は人道をどんな人が通るということも分からなくなる。
 どういう動機であんな事をしたのだろうという問題は、この時早くも頭を擡《もた》げた。随分官能は若い血の循環と共に急劇な動揺をもするが、思慮は自分で自分を怪しむ程冷やかである。或時瀬戸が「君は老人のような理窟《りくつ》を考えるね」と云ったのも道理である。色でしたか、慾でしたか、それとも色と慾との二道《ふたみち》掛けてしたかと、新聞紙の三面の心理のような事が考えられる。そして慾でするなら、書生風の自分を相手にせずとも、もっと人選《にんせん》の為様《しよう》がありそうなものだと、謙譲らしい反省をする、その裏面にはvanite[#
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