十八
純一は亀清の帰りに、両国橋の袂に立って、浜町の河岸を廻って来る電車を待ち受けて乗った。歳の暮が近くなっていて、人の往来《ゆきき》も頻繁《ひんぱん》な為めであろう。その車には満員の赤札が下がっていたが、停車|場《ば》で二三人降りた人があったので、とにかく乗ることだけは乗られた。
車の背後の窓の外に、横に打ち附けてある真鍮《しんちゅう》の金物に掴まって立っていると、車掌が中へ這入《はい》れと云う。這入ろうと思って片足高い処に踏み掛けたが、丁度出入口の処に絆纏《はんてん》を着た若い男が腕組をして立っていて、屹然《きつぜん》として動かない。純一は又足を引っ込めて、そのまま外にいたが、車掌も強いて這入れとは云わなかった。
そのうち車が急に曲がった。純一は始て気が附いて見れば、浅草へ行く車であった。宴会の席で受けた色々の感動が頭の中でchaos《カオス》を形づくっているので、何処《どこ》へ行く車か見て乗るという注意が、覚えず忘れられたのである。
帰りの切符を出して、上野広小路への乗換を貰った。そして車掌に教えられて、廐橋《うまやばし》の通りで乗り換えた。
こん度の本所《ほんじょ
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