上で結んだり、ほどいたりしている。この畚《ふご》の中の白魚がよじれるような、小さい指の戯れを純一が見ていると、おちゃらもやはり目を偸《ぬす》むようにして、ちょいちょい純一の方を見るのである。
 視線が暫《しばら》く往来《ゆきき》をしているうちに、純一は次第に一種の緊張を感じて来た。どうにか解決を与えなくてはならない問題を与えられているようで、窘迫《きんぱく》と不安とに襲われる。物でも言ったら、この不愉快な縛《いましめ》が解けよう。しかし人の前に来て据わっているものに物は言いにくい。いや。己の前に来たって、旨《うま》く物が言われるかどうだか、少し覚束《おぼつか》ない。一体あんなに己の方を見るようなら、己の前へ来れば好《い》い。己の前へ来たって、外の客のするように、杯を遣《や》るなんという事が出来るかどうだか分からない。どうもそんな事をするのは、己には不自然なようである。強いてしても柄にないようでまずかろう。向うが誰にでも薦めるように、己に酒を薦めるのは造作はない筈である。なぜ己の前に来ないか。そして酌をしないか。向うがそうするには、先ず打勝たなくてはならない何物も存在していないではないか
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