っていない。
しかしおちゃらはこのにやけ男を、青眼を以て視るだろうか。将《は》た白眼を以て視るだろうか。
純一の目に映ずる所は意外であった。おちゃらは酌をするとき、ちょいと見たきり顧みない。反応《はんおう》はどう見ても中性である。
俳優はおちゃらと袖の相触れるように据わって、杯を前に置いて、やはり左の手を畳に衝いて話している。
「狂言も筋が御見物にお分かりになれば宜しいということになりませんと、勤めにくくて困ります。脚本の長い白《せりふ》を一々|諳記《あんき》させられてはたまりません。大家のお方の脚本は、どうもあれに困ります。女形ですか。一度調子を呑み込んでしまえば、そんなにむずかしくはございません。女優も近々出来ましょうが、やはり男でなくては勤めにくい女の役があると仰《おっ》しゃる方もございます。西洋でも昔は男ばかりで女の役を勤めましたそうでございます」
金鎖は天晴《あっぱれ》mecene[ #一つ目の「e」は「´」付き。二つ目の「e」は「`」付き]《メセエヌ》らしい顔をして聞いている。おちゃらはさも退屈らしい顔をして、絎紐《くけひも》程の烟管挿《きせるさ》しを、膝《ひざ》の
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