の帯を締めている中婆《ちゅうば》あさんである。相手にとは云っても、客が芸者を相手にしている積りでいるだけで、芸者は些《すこ》しもこの客を相手にしてはいない。客は芸者を揶揄《からか》っている積りで、徹頭徹尾芸者に揶揄われている。客を子供扱いにすると云おうか。そうでもない。無智な子供を大人が扱うには、多少いたわる情がある。この老妓《ろうぎ》はmalintentionne[# 最後の「e」は「´」付き]《マルアンタンションネエ》に侮辱を客に加えて、その悪意を包み隠すだけの抑制をも自己の上に加えていないのである。客は自己の無智に乗ぜられていながら、少しもそれを曉《さと》らずに、薄い笑談《じょうだん》の衣を掛けた、苦い皮肉を浴《あび》せられて、無邪気に笑い興じている。
 純一は暫く聞いていて、非常に不快に感じた。馬鹿にせられている四十男は、気の毒がって遣る程の価値はない。それに対しては、純一は全然indifferent[# 一つ目の「e」は「´」付き]《アンジフェラン》でいる。しかし老妓は憎い。
 芸者は残忍な動物である。これが純一の最初に芸者というものに下した解釈であった。
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