い足音と己の重い足音とが反響をした。短い間ではあったが、夢を見ているような物語めいた感じがした。
 突き当りに牡丹《ぼたん》に孔雀《くじゃく》をかいた、塗縁《ぬりぶち》の杉戸がある。上草履を脱いで這入って見ると内外《うちそと》が障子で、内の障子から明りがさしている。国の内に昔お代官の泊った座敷というのがあって、あれがあんな風に出来ていた。なんというものだか知らない。仮りに書院造りのcolonnade《コロンナアド》と名づけて置く。恒《こう》先生はだいぶお大名染《だいみょうじ》みた事が好きであったと思う。
 しづえが腰を屈《かが》めて、内の障子を一枚開けた。この間《ま》には微かな電燈が只一つ附けてあった。何も掛けてない、大きい衣桁《いこう》が一つ置いてあるのが目に留まった。しづえは向うの唐紙の際へ行って、こん度は膝《ひざ》を衝いて、「いらっしゃいました」と云って、少し間を置いて唐紙を開けた。
 己はとうとう奥さんに逢った。この第三の会見は、己が幾度か実現させまいと思って、未来へ押し遣るようにしていたのであったが、とうとう実現させてしまったのである。しかも自分が主動者になって。
「どうぞお
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