大宮に着いた。駅員に切符を半分折り取らせて、停車場を出るとき、大村がさも楽々したという調子で云った。
「ああ苦しかった」
「なぜです」
「馬鹿げているけれどね、僕は或る種類の人間には、なるべく自己を観察して貰いたくないのだ」
「その種類の人間に詠子さんが属しているのですか」
大村は笑った。「まあ、そうだね」
「一体どういう種類なのでしょう」
「そうさね。一寸説明に窮するね。要するに自己を誤解せられる虞《おそれ》のある人には、自己を観察して貰いたくないとでも云ったら好《い》いのでしょう」純一は目を※[#「※」は「目+爭」、第3水準1−88−85、99−8]《みは》っている。「これでは余り抽象的かねえ。所謂《いわゆる》教育界の人物なんぞがそれだね」
「あ。分かりました。つまりhypocrites《イポクリイト》だと云うのでしょう」
大村は又笑った。「そりゃあ、あんまり酷だよ。僕だってそれ程教育家を悪く思っていやしないが、人を鋳型に※[#「※」は「「山」の下に「手へん+甘」」、99−12]《は》めて拵《こしら》えようとしているのが癖になっていて、誰《だれ》をでもその鋳型に※[#「※」は「
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