将校集まれの喇叭《ラッパ》を吹かせて、命令を伝えるのを見たことがある。あの時より外には、こんな口吻《こうふん》で物を言う人を見たことがないのである。
 純一は心のうちで、この未知の夫人と坂井夫人とを比較することを禁じ得なかった。どちらも目に立つ女であって、どこか技巧を弄《ろう》しているらしい、しかしそれが殆ど自然に迫っている。外《ほか》の女は下手が舞台に登ったようである。丁度芸術にも日本には或るmanierisme[# 一つ目の「e」は「´」付き]《マニエリスム》が行われているように、風俗にもそれがある。本で読んだり、画で見たりする、西洋の女のように自然が勝っていない。そしてその技巧のある夫人の中で、坂井の奥さんが女らしく怜悧《れいり》な方の代表者であるなら、この奥さんは女丈夫《じょじょうふ》とか、賢夫人とか云われる方の代表者であろうと思った。
 そこへ、純一はどこへ行ったかと見廻しているような様子で、大村が外から覗いたので、純一はすぐに出て行って、一しょに三等客の待っているベンチの側《そば》の石畳みの上を、あちこち歩きながら云った。
「今一等待合にいた夫人は、当り前の女ではないようで
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