あるのですね」
「無論そうさ。自己が造った個人的道徳が公共的になるのを、飛躍だの、復活だのと云うのだね。だから積極的新人が出来れば、社会問題も内部から解決せられるわけでしょう」
二人は暫く詞が絶えた。料理は小鳥の炙《あぶり》ものに萵苣《ちさ》のサラダが出ていた。それを食ってしまって、ヴェランダへ出て珈琲《コオフィイ》を飲んだ。
勘定を済ませて、快い冬の日を角帽と鳥打帽とに受けて、東京に珍らしい、乾いた空気を呼吸しながら二人は精養軒を出た。
十二
二人は山を横切って、常磐華壇《ときわかだん》の裏の小さな坂を降りて、停車|場《ば》に這入《はい》った。時候が好《い》いので、近在のものが多く出ると見えて、札売場の前には草鞋《わらじ》ばきで風炉敷包《ふろしきづつみ》を持った連中が、ぎっしり詰まったようになって立っている。
「どこにしようか」と、大村が云った。
「王子も僕はまだ行ったことがないのです」と純一が云った。
「王子は余り近過ぎるね。大宮にしよう」大村はこう云って、二等待合の方に廻って、一等の札を二枚買った。
時間はまだ二十分程ある。大村が三等客の待つベンチのある処の
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