ろうし、両方の動機を有しているのもあるでしょう。そこで新人だって積極的なものを求めて、道徳を構成しようとか、宗教を構成しようとかいうことになれば、それはどうせ利己では行《い》けないでしょうよ」
「それではどうしても又因襲のような或る物に縛《ばく》せられるのですね。いつかもその事を言ったら、あなたは縄の当り処が違うと云ったでしょう。あれがどうも好く分らないのですが」
「大変な事を記憶していましたね。僕はまあ、こんな風に思っているのです。因襲というのは、その縛《いましめ》が本能的で、無意識なのです。新人が道徳で縛られるのは、同じ縛《いましめ》でも意識して縛られるのです。因襲に縛られるのが、窃盗をした奴が逃げ廻っていて、とうとう縛られるのなら、新人は大泥坊が堂々と名乗って出て、笑いながら縛《ばく》に就くのですね。どうせ囚われだの縛《いましめ》だのという語《ことば》を使うのだから」
大村が自分で云って置いて、自分が無遠慮に笑うので、純一も一しょになって笑った。暫くしてから純一が云った。
「そうして見ると、その道徳というものは自己が造るものでありながら、利他的であり、social《ソシアル》で
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