さ。外国人が岡目八目で、やっぱり冬寒くなる前が一番|好《い》いと云っているね」
「そうですかねえ。どっちの方へ行《い》きますか」
「そうさ。僕もまだ極めてはいないのです。とにかく上野から汽車に乗ることにするさ」
「もうすぐ午《ひる》ですね」
「上野で食って出掛けるさ」
純一が袴《はかま》を穿いていると、大村は机の上に置いてある本を手に取って見た。
「大変なものを読んでいるね」
「そうですかね。まだ初めの方を見ているのですが、なんだかひどく厭世的な事が書いてあります」
「そうそう。行《ゆ》き留まりのカトリック教まで行って、半分道だけ引き返して、霊的自然主義になるという処でしょう」
「ええ。そこまで見たのです。一体先きはどうなるのですか」
こう云いながら、純一は袴を穿いてしまって、鳥打帽を手に持った。大村も立って戸口に行って腰を掛けて、編上沓《あみあげぐつ》を穿き掛けた。
「まあ、歩きながら話すから待ち給え」
純一は先きへ下駄を引っ掛けて、植木屋の裏口を覗《のぞ》いて、午食《ひる》をことわって置いて、大村と一しょに歩き出した。大村と並んで歩くと、動《やや》もすればこの巌乗《がんじょう
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