》な大男に圧倒せられるような感じのするのを禁じ得ない。
 純一の感じが伝わりでもしたように、大村は一寸《ちょっと》純一の顔を見て云った。
「ゆっくり行《い》こうね」
 なんだか譲歩するような、庇護《ひご》するような口調であった。しかし純一は不平には思わなかった。
「さっきの小説の先きはどうなるのですか」と、純一が問うた。
「いや。大変なわけさ。相手に出て来る女主人公は正真正銘のsataniste《サタニスト》なのだからね。しかしドュルタルは驚いて手を引いてしまうのです。フランスの社会には、道徳も宗教もなくなって、只悪魔主義だけが存在しているという話になるのです。今まであの作者のものは読まなかったのですか」
「ええ。つい読む機会がなかったのです。あの本も註文して買ったのではないのです。瀬戸が三才社に大分沢山フランスの小説が来ていると云ったので、往って見たとき、ふいと買ったのです」
「瀬戸はフランスは読めないでしょう」
「読めないのです。学校で奨励しているので、会話かなんかを買いに行ったとき、見て来て話したのです」
「そんな事でしょう。まあ、読んで見給え。随分猛烈な事が書いてあるのだ。一体
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