りがた》くもないように思った。純一も東京に出て、近く寄って預言者を見てから、渇仰《かっこう》の熱が余程冷却しているのである。
対話が済んで客が帰る。主人公が独りで物を考えている。そこにこんな事が書いてある。「材料の真実な事、部分部分の詳密な事、それから豊富で神経質な言語、これ等は写実主義の保存せられなくてはならない側である。しかしその上に霊的価値を汲《く》むものとならなくてはならない。奇蹟《きせき》を官能の病で説明しようとしてはならない。人生に霊と体《たい》との二つの部分があって、それが鎔合《ようごう》せられている。寧ろ混淆《こんこう》せられている。小説も出来る事なら、そんな風に二つの部分があらせたい。そしてその二つの部分の反応《はんおう》、葛藤《かっとう》、調和を書くことにしたい。一言《いちごん》で言えば、ゾラの深く穿《うが》って置いた道を踏んで行《ゆ》きながら、別にそれと併行している道を空中に通ぜさせたい。それが裏面の道、背後の道である。一言で言えば霊的自然主義を建立するのである。そうなったらば、それは別様な誇りであろう。別様な完全であろう。別様な強大であろう」そういう立派な事が
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