もの》も五百が尺《ものさし》を手にして指図し、布目《ぬのめ》の毫《ごう》も歪《ゆが》まぬように陸に張らせた。「善く張った切《きれ》は新しい反物《たんもの》を裁ったようでなくてはならない」とは、五百の恒《つね》の詞《ことば》であった。
 髪を剃《そ》り髪を結《ゆ》うことにも、陸は早く熟錬した。剃ることには、尼|妙了《みょうりょう》が「お陸様が剃《す》って下さるなら、頭が罅欠《ひびかけ》だらけになっても好《い》い」といって、頭を委《まか》せていたので馴《な》れた。結うことはお牧《まき》婆《ば》あやの髪を、前髪に張《はり》のない、小さい祖母子《おばこ》に結ったのが手始《てはじめ》で、後には母の髪、妹の髪、女中たちの髪までも結い、我髪は固《もと》より自ら結った。唯|余所行《よそゆき》の我髪だけ母の手を煩わした。弘前に徙《うつ》った時、浅越《あさごえ》玄隆、前田善二郎の妻、松本|甲子蔵《きねぞう》の妹などは菓子折を持って来て、陸に髪を結ってもらった。陸は礼物《れいもつ》を却《しりぞ》けて結って遣り、流行《はやり》の飾をさえ贈った。
 陸は生得《しょうとく》おとなしい子で、泣かず怒《いか》らず、饒
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