《もうしわけ》がございません。わたくしはお照殿にお近づきになりたいと、先方へ申し込んで、先方からも委細承知したという返事があって参ったのでございます。その席へ立派にお化粧をして茶を運んで出て、暫時わたくしの前にすわっていて、時候の挨拶《あいさつ》をいたしたのは、兼《かね》て申し上げたとおりの美しい女でございました。今日《こんにち》参ったよめ御《ご》は、その日に菓子鉢か何か持って出て、閾《しきい》の内までちょっとはいったきりで、すぐに引き取りました。わたくしはよもやあれがお照殿であろうとは存じませなんだ。余りの間違でございますので、お馬を借用して、大須家へ駆け付けて尋ねましたところが、御挨拶をさせた女は照のお引合せをいたさせた倅《せがれ》のよめでございますという返答でございます。全くわたくしの粗忽《そこつ》で」といって、杉浦はまた※[#「桑+頁」、第3水準1−94−2]の汗を拭った。
その七十九
五百《いお》は杉浦喜左衛門の話を聞いて色を変じた。そして貞固に「どうなさいますか」と問うた。
杉浦は傍《かたわら》からいった。「御破談になさるより外ございますまい。わたくしがあの日
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