いた。明朝《みょうちょう》金を貴人の許《もと》に齎《もたら》さんがためである。この金を上《たてまつ》る日は予《あらかじ》め手島をして貴人に稟《もう》さしめて置いたのである。
 抽斎は忽《たちま》ち剥啄《はくたく》の声を聞いた。仲間《ちゅうげん》が誰何《すいか》すると、某貴人の使《つかい》だといった。抽斎は引見した。来たのは三人の侍《さぶらい》である。内密に旨《むね》を伝えたいから、人払《ひとばらい》をしてもらいたいという。抽斎は三人を奥の四畳半に延《ひ》いた。三人の言う所によれば、貴人は明朝を待たずして金を獲ようとして、この使を発したということである。
 抽斎は応ぜなかった。この秘事に与《あずか》っている手島は、貴人の許《もと》にあって職を奉じている。金は手島を介して上《たてまつ》ることを約してある。面《おもて》を識《し》らざる三人に交付することは出来ぬというのである。三人は手島の来ぬ事故《じこ》を語った。抽斎は信ぜないといった。
 三人は互《たがい》に目語《もくご》して身を起し、刀の※[#「木+覇」、第4水準2−15−85]《つか》に手を掛けて抽斎を囲んだ。そしていった。我らの言《こ
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