には綺麗な草色の沓足袋《くつたび》を穿いてゐる。沓は桃色の鞣革《なめしがは》で、それが黄いろい紐で締めてある。その締めた結玉がキヤベツの形になつてゐる。お神さんは左の手に小さい、重みのある懐中時計を持つて、右の手には大きい杓子を持つてゐる。その杓子で鍋の中のキヤベツと豚の肉とを掻き廻すのである。お神さんの傍には斑《まだら》の猫の太つたのがゐる。その尻つぽには子供がいたづらに金めつきの懐中時計を括り付けたので、猫はそれを引き摩つてゐる。
子供が今例にして話してゐる家には三人ゐる。それが三人とも前の菜園で豚の番をしてゐる。三人とも丈は二呎で頭に三角帽子を被つてゐる。赤いチヨツキが太股の辺まで垂れてゐる。ずぼんは膝切りで、ブツクスキンと云ふ毛織で拵へてある。沓足袋は赤い毛糸で編んである。重さうな沓には大きい銀の金物が付いてゐる。上着は長くて、それに大きい貝殻ぼたんが付けてある。皆煙管を口に銜へて、右の手には胴を円くふくらませた懐中時計を持つてゐる。口から煙を吹いては時計を見、時計を見ては煙を吹く。それをいつまでも繰り返してゐるのである。豚は皆ひどく太つてゐて、不精である。キヤベツの葉の枯れ
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