は、必ず力の限を尽してそれを果たすだらうと云ふこと、正しい古文書を比較して、自己の良心を満足させるやうに細密に事実を考へて、苟《いやしく》も歴史家たる身分に負《そむ》かないやうに、公平無私にその話をするだらうと云ふことには、恐らくは誰一人疑を挾《さしはさ》むものはあるまい。
 己は金石文字や古文書を精しく調べて、先づあのスピイスブルク市が始て興つた時、矢張現今の地点を占めてゐたもので、それから後少しも移動したものでないと云ふことを確言することが出来る。併しその創立がいつの事であつたかと云ふことは、己も遺憾ながら或る不定の断案を以て答へるより外無い。兎に角非常に遠隔した時代の事だから、我々が溯つて計算し得る時代の最大距離に於いて、あの市は創立せられたのだと丈は己が明言しても好からう。
 そこでスピイスブルクと云ふ地名の起原だが、これも矢張遺憾ながら十分に説明することが出来ない。臆説は種々に立てられてゐる。中にはいかにも巧妙で、緻密で、博識の言《こと》らしいのがある。中には又それの反対だと思はれるのもある。併しその中でどれ一つ十分の根拠を有してゐると認めて好いものは無い。已むことなくんば、
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