穴《ほらあな》のようになった所がある。下には大きい材木が横になっているので、床を張ったようである。
 男の子が先に立って、横になっている材木の上に乗って、一番|隅《すみ》へはいって、「姉えさん、早くおいでなさい」と呼ぶ。
 姉娘はおそるおそる弟のそばへ往った。
「まあ、お待ち遊ばせ」と女中が言って、背に負っていた包みをおろした。そして着換えの衣類を出して、子供を脇《わき》へ寄らせて、隅のところに敷いた。そこへ親子をすわらせた。
 母親がすわると、二人の子供が左右からすがりついた。岩代《いわしろ》の信夫郡《しのぶごおり》の住家《すみか》を出て、親子はここまで来るうちに、家の中ではあっても、この材木の蔭より外らしい所に寝たことがある。不自由にも次第に慣れて、もうさほど苦にはしない。
 女中の包みから出したのは衣類ばかりではない。用心に持っている食べ物もある。女中はそれを親子の前に出して置いて言った。「ここでは焚火《たきび》をいたすことは出来ません。もし悪い人に見つけられてはならぬからでございます。あの塩浜の持ち主とやらの家まで往って、お湯をもらってまいりましょう。そして藁《わら》や薦《こも
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