野町を北へ行くと、右側に石柱|鐵扉《てつぴ》の門があつて、光照院と書いた陶製の標札が懸けてある。墓地は門を入つて右手、本堂の南にある。

     二十五

 光照院の墓地の東南隅に、殆ど正方形を成した扁石《ひらいし》の墓があつて、それに十四人の戒名が一列に彫《ゑ》り付けてある。其中三人だけは後に追加したものである。追加三人の最も右に居るのが眞志屋十一代の壽阿彌、次が十二代の「戒譽西村清常居士、文政十三年|庚寅《かういん》十二月十二日」、次が「證譽西村清郷居士、天保九年|戊戌《ぼじゆつ》七月五日」である。壽阿彌は西村氏の菩提所昌林院に葬られたが、親戚が其名を生家の江間氏の菩提所に留《とゞ》めむがために、此墓に彫《ゑ》り添へさせたものであらう。清常、清郷は過去帳原本の載せざる所で、獨《ひとり》別本にのみ見えてゐる。殘餘十一人の古い戒名は皆別本にのみ出てゐる名である。清郷の何人たるかは考へられぬが、清常の近親らしく推せられる。
 古い戒名の江間氏親戚十一人の關係は、過去帳別本に徴するに頗る複雜で、容易には明《あきら》め難い。唯《たゞ》二三の注意に値する件々を左に記して遺忘に備へて置く。
 
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