た。誰一人成程と承服せぬものはない。死ぬるのは構わぬ。それは兵卒になって国を立った日から覚悟している。しかし耻辱《ちじょく》を受けて死んではならぬ。そこで是非切腹させて貰おうと云うことに、衆議一決した。
 十六人は袴《はかま》を穿《は》き、羽織を着た。そして取次役の詰所へ出掛けて、急用があるから、奉行衆《ぶぎょうしゅう》に御面会を申し入れて貰いたいと云った。
 取次役は奥の間へ出入して相談する様子であったが、暫《しばら》くして答えた。
「折角の申出ではあるが、それは相成らぬ。おのおのはお構《かまい》の身分じゃ。夜中に推参して、奉行衆に逢いたいと云うのは宜しくない」と云うのである。十六人はおこった。
「それは怪《け》しからん。お構の身とは何事じゃ。我々は皇国のために明日一命を棄てる者共じゃ。取次をせぬなら、頼まぬ。そこを退け。我々はじきに通る」
 一同は畳を蹴立《けた》てて奥の間へ進もうとした。
 奥の間から声がした。
「いずれも暫く控えておれ。重役が面会する」と云うのである。
 襖《ふすま》をあけて出たのは、小南、林と下横目数人とである。
 一同礼をした上で、竹内が発言した。
「我々は
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