ゃい。お話をいたしましょう。」よしは台所の板の間におとなしくすわって、弟を円く堆《うずだか》い膝《ひざ》の上に招き寄せる。声は清く朗《ほがらか》である。「昔おいらんがございました。そのおいらんは目っかちでございました。そこへお客がまいりました。そのお客はあばたでございました。朝お客が帰る時、おいらんが送って出て、柚子《ゆず》来なますえと申しました。そら、あばたの顔は柚子見たいでございましょう。するとお客が、目っかち四っかち時分には来ようよと申しましたとさ。」よしのお伽話にはおいらんとお客とのみが人物として出るのである。
人生の評価は千殊万別である。仏も王とすべく、魔も王とすべきである。大尽王香以、清兵衛を立つるときは、微塵数のパルヴニュウは皆守銭奴となって懺悔《ざんげ》し、おいらん王を立つるときは、貞婦烈女も賢妻良母も皆わけしらずのおぼことなって首を俛《た》るるであろう。
名僧智識の宗教家王たるべきが如く、小説家王たるべきものもあろう。碩学《せきがく》大儒《たいじゅ》の哲学者王たるべきが如く、批評家王たるべきものもあろう。出版業者王たるべきものもあろう。新聞経営者王たるべきものもあ
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