いる。
 詣《もう》で畢《おわ》って帰る時、わたくしはまた子を抱いた女の側《そば》を通らなくてはならなかった。わたくしは女に問うた。
「親類の人が参詣《さんけい》しますか。」
「ええ。余所《よそ》へおよめに往った方が一人残っていなすって、忌日には来られます。芝の炭屋さんだそうで、たしか新原元三郎と云う人のお上《かみ》さんだと存じます。住職は好く存じていますが、只今留守でございます。なんなら西教寺とこちらとの間に花屋が住っていますから、聞いて御覧なさいまし。」
 わたくしは再び女に謝して寺を出た。そして往来に立ち止って花屋を物色した。
 西教寺と願行寺との間の町家は皆新築の小さい店になっている。その間に挟まれて、ほとんど家とは云い難い程の小家の古びたのが一軒あって、葭簀《よしず》が立て廻してある。わたくしはそれを見て、かつてその前に樒《しきみ》のあるのを見たことを想起した。
 わたくしは葭簀の中に這入った。家の内はもうほとんど真暗である。瞳《ひとみ》を定めて見れば、老いさらぼうた翁媼《おううん》が蹲《うずくま》っている。家も人も偶然開化の舌に舐《な》め残されたかと感ぜられる。またお伽話《
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