よみ》であるのを、たまたま植字者が「ほそき」と誤ったものかと思っていたのである。
「では細いと云う字を書くのでしょう。」この女は文字を識っていた。
「そうです。御存じでしょうか。」
「ええ、存じています。あの衝当《つきあたり》にあるのが摂津国屋の墓でございます。」抱かれている穉子《おさなご》はわたくしを見て、頻《しきり》に笑って跳《おど》り上がった。
わたくしは女に謝して墓に詣《まい》った。わたくしはなんだか新教の牧師の妻とでも語ったような感じがした。
本堂の東側の中程に、真直《まっすぐ》に石塀に向って通じている小径《こみち》があって、その衝当《つきあたり》に塀を背にし西に面して立っているのが、香以が一家の墓である。
向って左側には石燈籠が立ててあって、それに「津国屋」と刻してある。
墓は正方形に近く、やや横の広い面の石に、上下二段に許多《あまた》の戒名が彫《え》り附けてあって、下には各《おのおの》命日が註してある。
十四
摂津国屋の墓石には、遠く祖先に溯《さかのぼ》って戒名が列記してあるので、香以の祖父から香以自身までの法諡《ほうし》は下列の左の隅に並んで
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