受け取つて、縁側に出した。
取締役はそれを披いて、いちの願書と引き比べた。いちの願書は町年寄の手から、取調の始まる前に、出させてあつたのである。
長太郎の願書には、自分も※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、256−下−2]や弟妹と一しよに、父の身代りになつて死にたいと、前の願書と同じ手跡で書いてあつた。
取調役は「まつ」と呼びかけた。しかしまつは呼ばれたのに氣が附かなかつた。いちが「お呼になつたのだよ」と云つた時、まつは始めておそるおそる項垂れてゐた頭を擧げて、縁側の上の役人を見た。
「お前は※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、256−下−8]と一しよに死にたいのだな」と、取調役が問うた。
まつは「はい」と云つて頷いた。
次に取調役は「長太郎」と呼び掛けた。
長太郎はすぐに「はい」と云つた。
「お前は書附に書いてある通りに、兄弟一しよに死にたいのぢやな。」
「みんな死にますのに、わたしが一人生きてゐたくはありません」と、長太郎ははつきり答へた。
「とく」と取調役が呼んだ。とくは※[#「姉」の正字、「女+※[#第
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