最後の一句
森鴎外
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)元文《げんぶん》三年
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三日間|曝《さら》した上、
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つて
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)遠い/\所へ
−−
元文《げんぶん》三年十一月二十三日の事である。大阪で、船乘業《ふなのりげふ》桂屋太郎兵衞《かつらやたろべゑ》と云ふものを、木津川口《きづがはぐち》で三日間|曝《さら》した上、斬罪に處すると、高札《かうさつ》に書いて立てられた。市中到る處太郎兵衞の噂ばかりしてゐる中に、それを最も痛切に感ぜなくてはならぬ太郎兵衞の家族は、南組《みなみぐみ》堀江橋際《ほりえばしぎは》の家で、もう丸二年程、殆ど全く世間との交通を絶つて暮してゐるのである。
この豫期すべき出來事を、桂屋へ知らせに來たのは、程遠からぬ平野町《ひらのまち》
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