ん》した。それは遠くもない田舎《いなか》に、甚五郎が隠《かく》れているのが知れたので、助命を願いに出たのである。源太夫はこういう話をした。甚五郎は鷺《さぎ》を撃つとき蜂谷と賭《かけ》をした。蜂谷は身につけているものを何なりとも賭けようと言った。甚五郎は運よく鷺を撃《う》ったので、ふだん望みをかけていた蜂谷の大小をもらおうと言った。それもただもらうのではない。代りに自分の大小をやろうというのである。しかし蜂谷は、この金熨斗《きんのし》付きの大小は蜂谷家で由緒《ゆいしょ》のある品だからやらぬと言った。甚五郎はきかなんだ。「武士は誓言《せいごん》をしたからは、一命をもすてる。よしや由緒があろうとも、おぬしの身に着けている物の中で、わしが望むのは大小ばかりじゃ。ぜひくれい」と言った。「いや、そうはならぬ。命ならいかにも棄《す》ちょう。家の重宝は命にも換《か》えられぬ」と蜂谷は言った。「誓言を反古《ほご》にする犬侍《いぬざむらい》め」と甚五郎がののしると、蜂谷は怒って刀を抜《ぬ》こうとした。甚五郎は当身《あてみ》を食わせた。それきり蜂谷は息を吹《ふ》き返さなかった。平生何事か言い出すとあとへ引か
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