オシップ・ディモフ Ossip Dymoff
森鴎外訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)拵《こしら》えた

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)両棲動物|奴《め》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)行ったが[#「行ったが」は底本では「行っが」]
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 襟二つであった。高い立襟で、頸の太さの番号は三十九号であった。七ルウブル出して買った一ダズンの残りであった。それがたったこの二つだけ残っていて、そのお蔭でおれは明日死ななくてはならない。
 あの襟の事を悪くは言いたくない。上等のオランダ麻で拵《こしら》えた、いい襟であった。オランダと云うだけは確かには分からないが、番頭は確かにそう云った。ベルリンへ来てからは、廉《やす》いので一度に二ダズン買った。あの日の事はまだよく覚えている。朝応用美術品陳列館へ行った。それから水族館へ行って両棲動物を見た。ラインゴルドで午食をして、ヨスチイで珈琲《コオフィイ》を飲んで、なんにするという思案もなく、赤い薔薇《ばら》のブケエを買って、その外にも鹿の角を二組、コブレンツの名所絵
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