のある画葉書を百枚買った。そのあとでエルトハイムに寄って新しい襟を買ったのであった。
 晩には方々歩いたっけ。珈琲店はウィクトリアとバウエルとへ行った。それから黒猫《シャアノアル》やリンデンや抜裏《パッサアジュ》なんぞの寄席にちょいちょい這入《はい》って覗いて見た。その外どこかへ行ったが[#「行ったが」は底本では「行っが」]、あとは忘れた。あの時は新しく買った分の襟を一つしていた。リッシュに這入ったとき、大きな帽子を被《かぶ》った別品さんが、おれの事を「あなたロシアの侯爵でしょう」と云って、「あなたにお目に掛かった記念にしますから、二十マルクを一つ下さいな」と云ったっけ。
 ホテルに帰ったのは、午前六時であった。自動車のテクサメエトルを見たら五の所に針が行っていた。それをどう云うものだか、ショッフヨオルの先生が十二の所へそっと廻した。なんだか面倒になりそうだから、おれは十五に相当する金をやった。部屋に這入って見ると、机の上に鹿の角や花束が載っていて、その傍に脱《はず》して置いて出た古襟があった。窓を開けて、襟を外へ投げた。それから着物を脱いで横になった。しかし今一つ例の七ルウブルの一ダ
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