興津弥五右衛門の遺書(初稿)
森鴎外

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)某《それがし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)弥五右衛門|奴《め》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「田+比」、第3水準1−86−44]
−−

 某《それがし》儀《ぎ》今年今月今日切腹して相果《あいはて》候《そろ》事いかにも唐突《とうとつ》の至《いたり》にて、弥五右衛門|奴《め》老耄《ろうもう》したるか、乱心したるかと申候者も可有之《これあるべく》候《そうら》えども、決して左様の事には無之《これなく》候《そろ》。某《それがし》致仕《ちし》候てより以来、当国|船岡山《ふなおかやま》の西麓《さいろく》に形ばかりなる草庵《そうあん》を営み罷在《まかりあり》候えども、先主人|松向寺殿《しょうこうじどの》御|逝去《せいきょ》遊ばされて後、肥後国《ひごのくに》八代《やつしろ》の城下を引払いたる興津《おきつ》の一家は、同国|隈本《くまもと》の城下に在住候えば、この
次へ
全13ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 鴎外 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング