[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った。そして大声を出して笑った。「ミリオネエルだ。あの、おめえがか。して見ると、珍らしいミリオネエルの変物だなあ。まあ、いいから来て寝ろ。おれの場所を半分分けてやる。ぴったり食っ附いて寝ると、お互に暖かでいい。ミリオネエルはよく出来たな。」
爺いさんは一本腕の臂《ひじ》を攫んだ。「まあ、黙って聞け。おれがおぬしに見せてやる。おれの宝物を見せるのだ。世界に類の無い宝物だ。」
一本腕は爺いさんの手を振り放して一歩退いた。「途方もねえ。気違じゃねえかしら。」
爺いさんはそれには構わずに、靴をぬぎはじめた。右の足には黄革の半靴を穿《は》いている。左の足には磨り切れた、控鈕《ボタン》留の漆塗の長靴を穿いている。その左の方を脱いで、冷たいのも感ぜぬらしく、素足を石畳の上に載せた。それから靴の中底を引き出した。それから靴の踵《かかと》に填《う》めてある、きたない綿を引き出した。綿には何やらくるんである。それを左の手に持って、爺いさんは靴を穿いた。そして身を起した。
「見ろよ」と云いながら、爺いさんは棒立ちに立って、右の手を外套の隠しに入れて、左の
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