って、無理に留めようとする。行先《ゆくさき》を言えば嘘だと云う。構わずに出ようとすると、是非聞きたい事があるから、ちょいとでも好《い》い、待って貰いたいと云う。着物を掴《つか》まえて放さなかったり、玄関に立ち塞《ふさ》がったり、女中の見る目も厭《いと》わずに、出て行くのを妨げようとする。末造は気に食わぬ事をも笑談のようにして荒立てずに済ます流義なのに、むしゃぶり附くのを振り放す、女房が倒れると云う不体裁を女中に見られた事もある。そんな時に末造がおとなしく留められて内にいて、さあ、用事を聞こうと云うと、「あなたわたしをどうしてくれる気なの」とか、「こうしていて、わたしの行末はどうなるでしょう」とか、なかなか一朝一夕に解決の出来ぬ難問題を提出する。要するに末造が女房の病気に試みた早出《はやで》遅帰《おそがえり》の対症療法は全く功を奏せなかったのである。
 末造は又考えて見た。女房は己の内にいる時の方が機嫌が悪い。そこで内にいまいとすれば、強いて内にいさせようとする。そうして見れば、求めて己を内にいさせて、求めて自分の機嫌を悪くしているのである。それに就いて思い出した事がある。和泉橋《いずみ
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