女中が飯の菜を何にしようかと問うても、返事をしなかったり、「お前の好《い》いようにおし」と云ったりする。末造の子供は学校では、高利貸の子だと云って、友達に擯斥《ひんせき》せられても、末造が綺麗好で、女房に世話をさせるので、目立って清潔になっていたのが、今は五味《ごみ》だらけの頭をして、綻《ほころ》びたままの着物を着て往来で遊んでいることがあるようになった。下女はお上さんがあんなでは困ると、口小言を言いながら、下手の乗っている馬がなまけて道草を食うように、物事を投遣《なげやり》にして、鼠入らずの中で肴《さかな》が腐ったり、野菜が干物になったりする。
家の中の事を生帳面《きちょうめん》にしたがる末造には、こんな不始末を見ているのが苦痛でならない。しかしこうなった元は分かっていて、自分が悪いのだと思うので、小言を言うわけにも行かない。それに末造は平生小言を言う場合にも、笑談《じょうだん》のように手軽に言って、相手に反省させるのを得意としているのに、その笑談らしい態度が却《かえ》って女房の機嫌を損ずるように見える。
末造は黙って女房を観察し出した。そして意外な事を発見した。それはお常の変な
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