った人の女房や子供に、わたし達親子のようななりをしているものがあるだろうか。今から思って見れば、あの女がいたお蔭で、わたし達に構ってくれなかったかも知れない。吉田さんの持物だったなんと云うのも、本当だかどうだか当にはならない。七曲りとかにいた時分から、内で囲って置いたかも知れない。いや。きっとそうに違ない。金廻りが好くなって、自分の着物や持物に贅沢《ぜいたく》をするようになったのを、附合があるからだのなんのと云ったが、あの女がいたからだろう。わたしをどこへでも連れて行かずに、あの女を連れて行ったに違ない。ええ、悔やしい。こんな事を思っていると、突然女中が叫んだ。
「あら、奥さん。どこへいらっしゃるのです」
 お常はびっくりして立ち留まった。下を向いてずんずん歩いていて、我家の門《かど》を通り過きようとしたのである。
 女中が無遠慮に笑った。

     拾肆《じゅうし》

 朝の食事の跡始末をして置いて、お常が買物に出掛ける時、末造は烟草を呑みつつ新聞を読んでいたが、帰って見れば、もう留守になっていた。若し内にいたら、なんと云って好《い》いかは知らぬが、とにかく打っ附かって、むしゃぶり
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