をする年でもあるめえ。好い加減にしろ」末造は存外容易に弁解が功を奏したと思って、心中に凱歌《がいか》を歌っている。
「だってお前さんのようにしている人を、女は好くものだから、わたしゃあ心配さ」
「へん。あが仏尊しと云う奴だ」
「どう云うわけなの」
「己のような男を好いてくれるのは、お前ばかりだと云うことよ。なんだ。もう一時を過ぎている。寝よう寝よう」

     拾参《じゅうさん》

 真実と作為とを綯交《ないまぜ》にした末造の言分けが、一時《いちじ》お上さんの嫉妬《しっと》の火を消したようでも、その効果は勿論《もちろん》 palliatif《パリアチイフ》 なのだから、無縁坂上に実在している物が、依然実在している限《かぎり》は、蔭口《かげぐち》やら壁訴訟やらの絶えることはない。それが女中の口から、「今日も何某《なにがし》が檀那様の格子戸にお這入になるのを見たそうでございます」と云うような詞になって、お上さんの耳に届く。しかし末造は言分けには窮せない。商用とやらが、そう極まって晩方にあるものではあるまいと云えば、「金を借《かり》る相談を朝っぱらからする奴があるものか」と云う。なぜこれま
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