けは暁《さと》ったが、何に困っているのか分からない。つい腹が立って帰っては来たが、午《ひる》のお菜《さい》がまだないのに、このままにしていては済まぬと云うことに気が付いた。さっき貰って出て行ったお足《あし》さえ、まだ帯の間に挿《はさ》んだきりで出さずにいるのであった。「ほんとにあんな厭《いや》なお上さんてありやしないわ。あんな内のお肴を誰が買って遣るものか。もっと先の、小さいお稲荷《いなり》さんのある近所に、もう一軒ありますから、すぐに行って買って来ましょうね」慰めるようにお玉の顔を見て起ち上がる。お玉は梅が自分の身方になってくれた、刹那の嬉しさに動されて、反射的に微笑《ほほえ》んで頷《うなず》く。梅はすぐばたばたと出て行った。
お玉は跡にそのまま動かずにいる。気の張《はり》が少し弛《ゆる》んで、次第に涌《わ》いて来る涙が溢《あふ》れそうになるので、袂《たもと》からハンカチイフを出して押えた。胸の内には只悔やしい、悔やしいと云う叫びが聞える。これがかの混沌《こんとん》とした物の発する声である。肴屋が売ってくれぬのが憎いとか、売ってくれぬような身の上だと知って悔やしいとか、悲しいとか云
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