だと云うことである。色の蒼《あお》い、ひょろひょろした美男ではない。血色が好くて、体格ががっしりしていた。僕はあんな顔の男を見たことが殆ど無い。強いて求めれば、大分《だいぶ》あの頃から後《のち》になって、僕は青年時代の川上眉山《かわかみびさん》と心安くなった。あのとうとう窮境に陥って悲惨の最期を遂げた文士の川上である。あれの青年時代が一寸《ちょっと》岡田に似ていた。尤《もっと》も当時|競漕《きょうそう》の選手になっていた岡田は、体格では※[#「二点しんにょう+向」、第3水準1−92−55]《はる》かに川上なんぞに優《まさ》っていたのである。
容貌はその持主を何人《なんぴと》にも推薦する。しかしそればかりでは下宿屋で幅を利かすことは出来ない。そこで性行はどうかと云うと、僕は当時岡田程均衡を保った書生生活をしている男は少かろうと思っていた。学期毎に試験の点数を争って、特待生を狙う勉強家ではない。遣《や》るだけの事をちゃんと遣って、級の中位《ちゅうい》より下には下《くだ》らずに進んで来た。遊ぶ時間は極《きま》って遊ぶ。夕食後に必ず散歩に出て、十時前には間違なく帰る。日曜日には舟を漕《こ》ぎ
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