sまじわ》っていて見たのだが、他の一半は岡田が去った後《のち》に、図らずもお玉と相識になって聞いたのである。譬《たと》えば実体鏡の下にある左右二枚の図を、一《いつ》の影像として視《み》るように、前に見た事と後に聞いた事とを、照らし合せて作ったのがこの物語である。読者は僕に問うかも知れない。「お玉とはどうして相識になって、どんな場合にそれを聞いたか」と問うかも知れない。しかしこれに対する答も、前に云った通り、物語の範囲外にある。只僕にお玉の情人になる要約の備わっていぬことは論を須《ま》たぬから、読者は無用の臆測をせぬが好《よ》い。
底本:「雁」新潮文庫、新潮社
1948(昭和23)年12月5日発行
1985(昭和60)年11月15日第76刷改版
1988(昭和63)年8月15日82刷
初出:雑誌「スバル」
1911(明治44)年9月第3年9号 壱、弐、参
1911(明治44)年10月第3年10号 肆、伍
1911(明治44)年11月第3年11号 陸、漆
1911(明治44)年12月第3年12号 捌、玖
1912(明治45)年2月第4年
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