ン《ひさし》に手を掛けた。女の顔は石のように凝っていた。そして美しく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った目の底には、無限の残惜しさが含まれているようであった。
この時石原の僕に答えた詞は、その響が耳に入《い》っただけで、その意は心に通ぜなかった。多分岡田の外套が下ぶくれになっていて、円錐形に見える処から思い附いて、円錐の立方積と云うことを言い出したのだと、弁明したのであろう。
石原も女を見ることは見たが、只美しい女だと思っただけで意に介せずにしまったらしかった。石原はまだ饒舌《しゃべ》り続けている。「僕は君達に不動の秘訣《ひけつ》を説いて聞かせたが、君達は修養が無いから、急場に臨んでそれを実行することが出来そうでなかった。そこで僕は君達の心を外へ転ぜさせる工夫をしたのだ。問題は何を出しても好かったのだが、今云ったようなわけで円錐の公式が出たのさ。とにかく僕の工夫は好かったね。君達は円錐の公式のお蔭で、unbefangen《ウンベファンゲン》 な態度を保って巡査の前を通過することが出来たのだ」
三人は岩崎邸に附いて東へ曲る処に来た。一人乗《いちにんのり》の人力車が
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