u時刻は丁度好い。達者な雁は皆|塒《ねぐら》を変えてしまった。僕はすぐに為事に掛かる。それには君達がここにいて、号令を掛けてくれなくてはならないのだ。見給え。そこの三間ばかり前の所に蓮の茎の右へ折れたのがある。その延線に少し低い茎の左へ折れたのがある。僕はあの延線を前へ前へと行かなくてはならないのだ。そこで僕がそれをはずれそうになったら、君達がここから右とか左とか云って修正してくれるのだ」
「なる程。Parallaxe《パララックセ》 のような理窟《りくつ》だな。しかし深くはないだろうか」と岡田が云った。
「なに。背の立たない気遣は無い」こう云って、石原は素早く裸になった。
石原の踏み込んだ処を見ると、泥は膝《ひざ》の上までしか無い。鷺《さぎ》のように足を※[#「足へん+喬」、第3水準1−92−40]《あ》げては踏み込んで、ごぼりごぼりと遣って行く。少し深くなるかと思うと、又浅くなる。見る見る二本の蓮の茎より前に出た。暫くすると、岡田が「右」と云った。石原は右へ寄って歩く。岡田が又「左」と云った。石原が余り右へ寄り過ぎたのである。忽《たちま》ち石原は足を停めて身を屈《かが》めた。そし
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