ヒ」とか、「君は果断だよ」とか云って、随分ゆるゆる歩きつつこの話を聞いた積であった。しかし聞いてしまって時計を見れば、石原に分れてからまだ十分しか立たない。それにもう池の周囲の殆ど三分の二を通り過ぎて、仲町裏の池の端をはずれ掛かっている。
「このまま往っては早過ぎるね」と、僕は云った。
「蓮玉へ寄って蕎麦《そば》を一杯食って行こうか」と、岡田が提議した。
 僕はすぐに同意して、一しょに蓮玉庵へ引き返した。その頃下谷から本郷へ掛けて一番名高かった蕎麦屋である。
 蕎麦を食いつつ岡田は云った。「切角今まで遣って来て、卒業しないのは残念だが、所詮《しょせん》官費留学生になれない僕がこの機会を失すると、ヨオロッパが見られないからね」
「そうだとも。機逸すべからずだ。卒業がなんだ。向うでドクトルになれば同じ事だし、又そのドクトルをしなくたって、それも憂うるに足りないじゃないか」
「僕もそう思う。只資格を拵《こしら》えると云うだけだ。俗に随《したが》って聊《いささか》復《また》爾《しか》りだ」
「支度はどうだい。随分慌ただしい旅立になりそうだが」
「なに。僕はこのままで往く。Wさんの云うには、日本
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