》であつた。垢《あか》つき弊《やぶ》れた法衣《ほふえ》を着《き》て、長《なが》く伸《の》びた髮《かみ》を、眉《まゆ》の上《うへ》で切《き》つてゐる。目《め》に被《かぶ》さつてうるさくなるまで打《う》ち遣《や》つて置《お》いたものと見《み》える。手《て》には鐵鉢《てつぱつ》を持《も》つてゐる。
 僧《そう》は默《だま》つて立《た》つてゐるので閭《りよ》が問《と》うて見た。「わたしに逢《あ》ひたいと云《い》はれたさうだが、なんの御用《ごよう》かな。」
 僧《そう》は云《い》つた。「あなたは台州《たいしう》へお出《いで》なさることにおなりなすつたさうでございますね。それに頭痛《づつう》に惱《なや》んでお出《いで》なさると申《まを》すことでございます。わたくしはそれを直《なほ》して進《しん》ぜようと思《おも》つて參《まゐ》りました。」
「いかにも言《い》はれる通《とほり》で、其《その》頭痛《づつう》のために出立《しゆつたつ》の日《ひ》を延《の》ばさうかと思《おも》つてゐますが、どうして直《なほ》してくれられる積《つもり》か。何《なに》か藥方《やくはう》でも御存《ごぞん》じか。」
「いや。四|大
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