スのである。
「とにかく話して見ましょう。」
「どうぞ。」
 久保田は花子にこう云った。「少し先生が相談があるというのだがね。先生が世界に又とない彫物師《ほりものし》で、人の体を彫る人だということは、お前も知っているだろう。そこで相談があるのだ。一寸《ちょっと》裸になって見せては貰《もら》われまいかと云っているのだ。どうだろう。お前も見る通り、先生はこんなお爺《じ》いさんだ。もう今に七十に間もないお方だ。それにお前の見る通りの真面目《まじめ》なお方だ。どうだろう。」
 こう云って、久保田はじっと花子の顔を見ている。はにかむか、気取るか、苦情を言うかと思うのである。
「わたしなりますわ。」きさくに、さっぱりと答えた。
「承諾しました」と、久保田がロダンに告げた。
 ロダンの顔は喜にかがやいた。そして椅子から起ち上がって、紙とチョオクとを出して、卓の上に置きながら、久保田に言った。「ここにいますか。」
「わたくしの職業にも同じ必要に遭遇《そうぐう》することはあるのです。しかしマドモアセユのために不愉快でしょう。」
「そうですか。十五分か二十分で済みますから、あそこの書籍室へでも行っていて下
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