≠獅≠汲潤@を連れて来たと云つた。
ロダンは這入つて来た男を見た時も、その詞を聞いた時も、別に顔色をも動かさなかつた。
いつか Kambodscha の酋長が巴里に滞在してゐた頃、それが連れて来てゐた踊子を見て、繊く長い手足の、しなやかな運動に、人を迷はせるやうな、一種の趣のあるのを感じたことがある。その時急いで取つた dessins が今も残つてゐるのである。さういふ風に、どの人種にも美しい処がある、それを見附ける人の目次第で美しい処があると信じてゐるロダンは、此間から花子といふ日本の女が 〔varie'te'〕 に出てゐるといふことを聞いて、それを連れて来て見せてくれるやうに、伝を求めて、花子を買つて出してゐる男に頼んで置いたのである。
今来たのはその興行師である。〔Impre'sario〕 である。
「こつちへ這入らせて下さい」とロダンは云つた。椅子をも指さないのは、その暇がないからばかりではない。
「通訳をする人が一しよに来てゐますが。」機嫌を伺ふやうに云ふのである。
「それは誰ですか。フランス人ですか。」
「いゝえ。日本人です。L'Institut Pasteur で為事を
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