夏目漱石論
森鴎外
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)なんと云った処《ところ》で
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](明治四十三年七月)
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一、今日の地位に至れる径路
政略と云うようなものがあるかどうだか知らない。漱石君が今の地位は、彼の地位としては、低きに過ぎても高きに過ぎないことは明白である。然れば今の地位に漱石君がすわるには、何の政策を弄するにも及ばなかったと信ずる。
二、社交上の漱石
二度ばかり逢ったばかりであるが、立派な紳士であると思う。
三、門下生に対する態度
門下生と云うような人物で僕の知て居るのは、森田草平君一人である。師弟の間は情誼が極めて濃厚であると思う。物集氏とかの二女史に対して薄いとかなんとか云うものがあるようだが、その二女史はどんな人か知らない。随って何とも云われない。
四、貨殖に汲汲たりとは真乎
漱石君の家を訪問したこともなく、またそれについて人の話を聞いたこともない。貨殖なんと云った処《ところ》で、余り金持になっていそうには思わ
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