れない。

   五、家庭の主人としての漱石

 前条の通りの次第だから、その家庭をも知らない。

   六、党派的野心ありや

 党派という程のものがあるかどうだか知らない。前に云った草平君の間柄だけなら、党派などと大袈裟《おおげさ》に云うべきではあるまい。

   七、朝日新聞に拠れる態度

 朝日新聞の文芸欄にはいかにも一種の決まった調子がある。その調子は党派的態度とも言えば言われよう。スバルや三田文学がそろそろ退治られそうな模様である。しかしそれはこの新聞には限らない。生存競争が生物学上の自然の現象なら、これも自然の現象であろう。

   八、創作家としての伎倆

 少し読んだばかりである。しかし立派な伎倆だと認める。

   九、創作に現れたる人生観

 もっと沢山読まなくては判断がしにくい。

   十、その長所と短所

 今まで読んだところでは長所が沢山目に附いて、短所と云う程のものは目に附かない。[#地から1字上げ](明治四十三年七月)



底本:「歴史其儘と歴史離れ 森鴎外全集14」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年8月22日第1刷発行
底本の親本:「
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