誇。三百里余瓊浦道。従今不復井中蛙。」

     その三十

 旅行の第二日は文化三年五月二十日である。紀行に曰く。「廿日卯時に発す。二里八丁上尾駅、一里桶川駅、一里卅町鴻の巣駅。午時《うまのとき》吹上堤を過ぐ。左は林近く田野も甚ひろからず。荒川の流遠くより来る。右は山林遠く田野至て濶く、溝渠縦横|忍城《をしじやう》樹間に隠顕して、遠黛《ゑんたい》城背に連続す。四里八丁熊谷駅。絹屋新平の家に投宿す。時正に申なり。蓮生山熊谷寺《れんしやうざんゆうこくじ》に詣《いた》り、什物《じふもつ》を看むことを乞ふ不許《ゆるさず》。碑図末に附す。此日炎暑昨日より甚し。行程九里|許《きよ》。」吹上堤を過ぐの下《しも》に、「吹上堤一に熊谷堤ともいふ」と註してある。
 詩集に「熊谷堤」三首がある。其一。「熊谷長堤行且休。荒川遠出鬱林流。漁歌一曲蒹葭底。只見※[#「竹かんむり/高」、第3水準1−89−70]尖不見舟。」其二。「十里青田平似筵。濃烟淡靄共蒼然。遠村尽処山城見。粉※[#「土へん+楪のつくり」、第4水準2−4−94]樹間断又連。」其三。「無数連山映夕陽。如浪起来如黛長。轎夫顧我揚※[#「竹かんむり
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