がある。「去年深秋君未回。賞遊吾毎侍含杯。菅公祠畔随行野。羅漢寺中共上台。飛雁遙書雖易達。畳雲愁思奈難開。機中錦字若無惜。幸織満村黄葉来。」蘭軒は前年茶山の江戸にゐた間、始終附いて歩いて少酌の相手をしたと見える。詩は題して置かなかつたが、亀井戸の天満宮に詣でた。本所の五百羅漢をも訪うたのである。結では黄葉夕陽村舎の主人《あるじ》に手紙の催促がしてある。
然るに蘭軒の催促するを須《ま》たず、茶山は丁度此頃手紙を書いた。即ち八月十三日の書で、前に引いた所のものが是である。「私も秋へなり、蠢々《しゆん/\》とうごき出候而状ども認候、御内上《おんうちうへ》様、おさよどのへ宜奉願上候、(中略)江戸は今年気候不順に御坐候よし、御病気いかゞ御案じ申候。」此に前年を追懐した数句があつて、末にかう云つてある。「今年《こんねん》は水辺《すゐへん》へ出可申心がけ候処、昨日より荊妻|手足痛《てあしいたみ》(病気でなければよいと申候)小児|菅《くわん》三|狂出候而《くるひいでそろて》どこへもゆかれぬ様子也、うき世は困りたる物也、前書|委《くはしく》候へば略し候、以上。」
茶山がコムプリマンを託した御内上様が
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