異人か。此には暫く疑を存して置く。
わたくしは書牘の月日を推定せむがために、既に「霞亭一周忌」云々の段を挙げて、今|直《たゞち》にこれに接するに新に亡くなつた女児の事を以てする。是は甲申中秋の月が照すに及ばなかつた黄葉村舎牀頭の小珠《せうじゆ》の何物なるかを究めむがためである。
女児は名を「おとら」と云つたらしい。文中此仮名の三字は頗る読み難い。わたくしは字画をたどつて「おとら」と読んだ。しかし「おとう」とも「おこう」とも読まれぬことは無い。
蘭軒はおとらに物を贈つた。然るに物の到つた時、おとらは既に死んでゐた。七月二十八日亥の刻に流行性痢疾の徴を見、八月三日辰の刻に死んだのである。甲申の七月は小であつたから、発病より死に至るまでは陰暦の五十一時間である。茶山は約して「其間三日許に候」と云つてゐる。
おとらが死んでから第十三日が八月|既望《きばう》である。「十五夜」の詩の註には「半月前喪姪孫女」と云つてある。牀頭の小珠が此おとらであることは固より疑を容れない。
然らばおとらは誰の子か。姪孫女《てつそんぢよ》とは茶山の同胞の子の娘か、将《はた》茶山の同胞の孫の女《むすめ》か。わ
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